公共工事の受注を目指す中小建設業者において、経審の点数は毎年気になるものです。「900点以上をキープしておきたいけど大丈夫だろうか?」とか、「都の格付けをBランクにしたいけど、経審の点数どうだろう?」といったご質問やご要望をよくいただきます。
また、初めてご縁をいただいたお客様とお話をすると、経審の点数のメカニズムをきちんと把握していない社長が意外と多いです。この点は行政書士がもっと丁寧に説明すべきなのですが、建設業許可には強いけど経審はそこまで強くはないという行政書士がいるのも事実です。
そこで、中小建設業者が経審の点数を上げるためにまず取り組むべきポイントをお伝えします。
目次
経審の点数(P点)についておさらい
経審の点数の計算式は、『経審結果通知書を見る上で、P点よりも大事なこと』の中でも紹介しましたが、ここでも再掲しておきます。おさらいしておきましょう。
総合評定値P点=0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)
- X1=完成工事高
- X2=自己資本額及び平均利益額
- Y=経営状況
- Z=技術職員数及び元請完成工事高
- W=その他審査項目(社会性等)
経審の点数は、会社全体についての評価項目であるX2、Y、Wと、工事業種ごとの評価項目であるX1、Zの5つの評価項目で計算します。上のグラフであれば、例えば次のように点数が付されています。
X1 | X2 | Y | Z | W | P点 | |
建築一式 | 250 | 150 | 200 | 210 | 100 | 910 |
とび土工 | 164 | 150 | 200 | 143 | 100 | 757 |
防水 | 144 | 150 | 200 | 208 | 100 | 802 |
ここで着目して欲しいのが、X2、Y、Wの3項目です。建築一式、とび土工、防水いずれの業種でも同じ点数がついています。以前にも書きましたが、X2、Y、Wの3項目は会社全体についての評価項目なので、経審を受けるすべての業種に影響します。一方で、X1とZは、X1は業種ごとの売上高、Z1は業種ごとの技術職員数と元請工事高を評価するものなので、業種によって点数のバラつきが出る評価項目です。
このことから、中小建設業者が経審の点数を全体的に底上げしたい場合には、点数の土台となるX2、Y、Wの3項目から取り組むのがおススメです。
狙うは量の評価ではなく、質の評価
このように、経審の点数(P点)の土台となるX2、Y、Wですが、この中でも中小建設業者がまず取り組むべき項目は、Y(経営状況分析)とW(社会性等)の2つです。以下ではその理由を説明します。
量的な評価項目であるX1、X2、Z
X1、X2、Zの3項目は、大きくなればなるほど点数の上がり方は逓減していきます(これについては、『中小建設業者は、経審と入札では『逃げ恥理論』で戦おう』をご参照ください。)が、売上(数字)が大きければ大きいほど、人が多ければ多いほど、点数が高くなります。言わば、“規模”に関する量的な評価項目です。
X1は工事高についての評価項目なので、工事売上が1千円でも高いほど経審の点数(P点)が高くなります。経審が建設業者の評価制度であることを考えると、当然と言えば当然です。
X2は自己資本と平均利益額についての評価項目なので、自己資本と営業利益と減価償却費が1千円でも高いほど経審の点数(P点)が高くなります。減価償却費がなぜ規模の評価と言えるかというと、減価償却費が大きい=設備投資がたくさんできる大きい会社だからです。
Zは技術職員数と元請工事高についての評価項目なので、技術職員は1人でも多い方が経審の点数(P点)が高くなりますし、元請工事高についてはX1と同様です。
したがって、X1、X2、Zの3項目は、大企業に有利な評価項目と言うことができます。
質的な評価項目であるYとW
一方で、YとWは質的な評価項目であり、企業規模の大きさに関係なく点数を稼げる評価項目です。
Yは経営状況分析(財務状況)についての評価項目で、「絶対的力量」として規模を評価する要素も一部含まれてはいますが、経営状況の良し悪しは単純な企業規模では評価できません。例えば、売上1億円前後の会社でもY点が1060点というところもありますし、売上15億円前後の会社でもY点が600点ほどのところもあります。
WはCSR(企業の社会的責任)についての評価項目で、基本的に大企業も中小企業も関係なく“ある事柄に取り組んでいるか否か”が見られています。例えば、3保険であれば加入か未加入かについて評価をするもので、0か100かしかありません。保険料が100万円以上だと10点加算しましょう!というような忖度はないのです。その意味で、Zは大企業も中小企業も平等な評価項目と言えます。
したがって、YとWは中小建設業者でも取り組みやすい評価項目と言うことができます。ぜひここから手を付けて改善していってみてください。
いかがでしたでしょうか。以前、『逃げ恥理論』をご紹介しましたが、売上規模は多少格好悪くても、それ以外の評価項目で点数を確保していく、取りやすいところで加点をもらっていくのが、中小建設業者の経審における基本的な考え方です。