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参謀となりうる行政書士の3つの判断基準
以前、『 経審は、決算の2か月前に決まる! 』という記事で、「経審で評価される数字の部分については、決算前(期中)から考えることが重要」とのお話をしました。これは経審と入札に携わっている行政書士であればそのうち気づくはずなのですが、決算前から会社の数字の部分にまで関与している行政書士は稀なようです。それはなぜなのかを考えてみました。
理由① “代書屋”こそ行政書士の本来的業務だから。
お客様と話をしていると、「お詳しいですね」とか「やっぱり専門家は違いますね」と言われることがあります。私にとっては、とても嬉しいお言葉です。しかし、それと同時に、「前の行政書士さんはそんなこと教えてくれなかった。」みたいなことを言われることもあり、なんとも申し訳ない気持ちになります。しかし、よくよく考えてみると、至極当たり前の話なのです。
行政書士は、行政書士法という法律によって、その業務内容が定められています。そこには「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(中略)を作成することを業とする。」とあります。つまり、書類の作成(と提出)が本来的な行政書士業務なのです。経審であれば建設業許可の決算(事業年度終了報告)届・経営状況分析・経営事項審査の書類の作成と提出、入札参加登録であれば各行政や団体への登録申請書類の作成と提出が、本来的な行政書士業務ということです。したがって、経審と入札の手続きを依頼された行政書士からすれば、経審については決算が終わってからが出番ですし、きちんと書類を作成して期限内に提出ができていれば本来的な業務としては完結しており、何のミスも落ち度もないわけです。
もちろん最近は書類の作成と提出だけではなく、コンサルティングだったり顧問契約だったりでサービスの拡充に取り組んでいる行政書士は多いです。なので、行政書士を探して依頼するのであれば、「手続きだけではなく、経審点数をアップするためのコンサルをしてほしい」とか「決算を組む前から関わってほしい」という具合に、本来の行政書士業務+α(プラスアルファ)を望んでいることをきちんと明確に伝えると良いでしょう。
理由② 文系ゆえに数字への苦手意識があるから。
私自身も算数と数学が苦手な根っからの文系なので人のことを言える立場ではないのですが、行政書士は法律系の資格ということもあり、文系の人が多い印象です。なので、“数字”に対して漠然とした不安や苦手意識を持っている方が多いです。高校時代あまりにもわからなくて逃げ出したくなった微分積分や三角関数が業務に出てくるわけではないですし、中学受験で苦戦した旅人算やつるかめ算だって頭からきれいさっぱりなくなっていても問題ないのに、苦手意識だけはしっかり残るんですよね…。
少し話が逸れましたが、今お話ししているのは経審と入札についてのお話です。こと経審においては、やはり決算書と建設業財務諸表への理解は避けて通れません。しかし、これらへの理解は算数でも数学でもなく、“経営数字”を表現する表現方法、表現するための仕組みを理解しているかどうかの問題です。数学が苦手だからと言ってついついから“経営数字”から目を背けている人は実にもったいないことをしていると思いますし、“経営数字”への理解は社長とより深い関わり方をするために必要な共通言語です。したがって、俗に言われる「決算書が読める」という状態が良いのは言うまでもなく、会計原則や決算書の仕組みを把握した上で、経審や入札について語れる行政書士を探していただくと良いでしょう。
ちなみに、私がどうやってこの数字への苦手意識を克服したかというと、キャッシュフローコーチとして学び、お金の流れを把握する術を身に付けたことで、自信をもって決算書や“経営数字”について話せるようになりました。具体的にどういう関わり方をしているかについては、別の機会にご紹介させていただきます。
理由③ 税理士さんの仕事に口を出しにくいから。
私自身も開業から5年くらいはなんとなく抵抗があったのですが、税理士さんの作成した決算書や申告書に口を出しては失礼だと、口を出すべきではないと思っていました。おそらく今でもそう思っている行政書士は少なからずいるのではないかと思います。これには2つの理由があります。
1つめは、税理士さんからお仕事をもらうことが多いからです。いつもお仕事を紹介してくれている税理士さんや社長が全幅の信頼を置いている税理士さんのミスを指摘したり、会計処理を改めてもらいたいという要望をしたりというのは、スポット業務の行政書士にはなかなか言いづらいものがあります。
2つめは、税務や会計のプロである税理士さんは正しいだろうと思っているからです。「我々行政書士よりも常日頃からプロとして数字に触れている税理士さんの決算書は正しいものだ」という意識が根強くあるように感じます。確かに会計業務や決算書の作成は税理士さんの方が長けているものと思いますが、私は決算書と建設業財務諸表は言語の違う別ものだと考えています。別ものなので、税理士さんの作成した決算書を建設業財務諸表に“翻訳”する必要があり、この翻訳については行政書士が専門家としてガッツリと関わることができる部分です。(これについては、改めて記事を書きたいと思います。)
主な理由を3つほど挙げました。なので、これらを乗り越えてくる行政書士を見つけていただくのが、社長にとって会社にとって売上と利益をもたらしてくれる行政書士となるでしょう。つまり、
- 手続きだけでなく、+αの引き出しを多く持っている。
- 決算書が読め、“経営数字”について話すことができる。
- 会社のために、税理士さんを巻き込める。
という3つを判断の基準にしていただくと良いと思います。もちろん純然たる経審手続きだけを依頼したいという社長もいるでしょう。うちでもそういうご依頼ももちろんあります。それはそれでOKです。何を自社でやり何を外注するのか、自社でできること自社に足りないものはなんなのかを改めて考えてみるとともに、経審と入札について行政書士を選ぶ上で参考になれば幸いです。