公共工事の受注に繋がる決算書とは?

こんにちは。“入札コンサルティングを通して建設業者さんの売上に貢献する”行政書士の小林裕門です。中小建設業者は経審の5つの評価項目のうちYとWから取り組んでいくと良いのですが、Wは決算日時点で有るか無しかという評価項目であるのに対し、Yは1年かけて事業活動をしてきた結果なので常日頃から意識しておきたい評価項目です。そこで、経営状況分析(Y点)を意識した“公共工事の受注に繋がる決算書”についてお伝えします。

貸借対照表の鉄則『貸借対照表はコンパクトに!』

親交のある公共工事コンサルタントの水嶋拓さんの著書『公共工事の経営学』において、公共工事における“良い決算書”の要素として、次のように列挙されています。

  • 黒字が続いている
  • 自己資本比率が高い
  • 借入金が少ない
  • 固定資産が少ない
  • 現金が多い
  • 資本金が多い

どれもうなずけるもので、経営状況分析(Y点)の評価においてもプラスとなる材料ばかりです。ここにさらに私から付け加えさせていただくとすれば、“貸借対照表はコンパクトであるほど良い”ということです。経営状況分析(Y点)においては、例えば100,000千円の売上を上げるのに、資産10,000千円の会社であれば資産を10回転させて効率的に売上を作れて素晴らしい!という評価になるのに対し、資産100,000千円の会社であれば資産を1回転させただけだから効率はまぁまぁですねという評価になってしまうのです。ぜい肉があって動きが鈍い会社よりも、筋肉質で動きが早い会社の方が評価が良いということになります。

ところで、会社はどういうときに倒産するかご存知ですか?赤字が続いたときでしょうか?債務超過になったときでしょうか?正解は、キャッシュ(現預金)がなくなったときです。赤字が続いて債務超過になっていても、金融機関が助けてくれたり、社長が会社にお金を貸したりすることができ、厳しいながらもキャッシュが繋げていれば倒産には至りません。しかし、いわゆる黒字倒産という言葉があるように、黒字であっても手許にキャッシュがなくて支払いが滞ってしまうと倒産してしまいます。

なので、財務コンサルタントや資金繰りに長けた税理士さんは、「現金はあればあっただけ良い(キャッシュがあれば会社はつぶれない)から、業績が良い時こそ低金利で借りておくと良い。」と仰っていることが多いです。しかし、これをやりすぎると経営状況分析(Y点)上はマイナスになってしまうので注意が必要です。この点は、財務や資金繰りを考える上では非常に悩ましい問題です。経審対策をやりすぎて会社がつぶれてしまっては本末転倒ですし、かといって公共工事を1つの柱として伸ばしていくためには経審対策を疎かにはできないし…というジレンマを常に抱えながら、私は建設業財務諸表と日々向き合っています。

損益計算書の鉄則『収益は上に、費用は下に!』

貸借対照表の鉄則があれば当然損益計算書の鉄則もあります。それが、“収益は上に、費用は下に”です。その前に押さえておいていただきたいのは、損益計算書に出てくる5つの利益です。自社の損益計算書を見ていただくとわかりますが、売上→原価→売上総利益→販売費及び一般管理費→・・・というように収益と費用が羅列してあり、とても見づらいと思います。なので、これを図式化してみたものが次の図です。

この図は損益計算書を左に90度横倒しにして、金額の大きさを縦の長さで表しています。右に行くほど様々な収益と費用を加算減算していって、最終的に税金を差し引いたものが当期純利益です。図を見るとわかりますが、損益計算書には5つの利益が表示されています。上から売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益そして当期純利益です。収益よりも費用が上回れば、当然ながら、売上総損失、営業損失、経常損失、税引前損失、当期純損失になります。ここで、5つの利益について簡単に説明します。

① 売上総利益

売上高から売上原価(工事専業であれば、建設業財務諸表に記載のある材料費、労務費、外注費、経費の合計)を引いたものを「売上総利益」と言います。一般的には“粗利”と呼ばれているので、こちらの方がなじみがある呼び方かもしれません。工事以外の兼業売上がある場合には、そこから生じる収益を合算して「売上総利益」を算出します。「売上総利益」は経営状況分析(Y点)の指標の1つ『総資本売上総利益率』の計算で使用します。ここがそもそも赤字になっていると出血が止まらないことになるので、早急に止血(対策)が必要です。

② 営業利益

①で求めた売上総利益から「販売費及び一般管理費」を引いたものが「営業利益」です。通常の営業活動で自社がどれだけ儲かったを表す利益です。金融機関ではこの営業利益と、次に説明する経常利益を重視して決算書を見ていると言われています。確かに営業利益が赤字だと、普通に事業をしていて儲かっていないということになるので、金融機関からみれば要注意先になるのも無理はありません。また、経営事項審査のX2(自己資本及び平均利益額)の項目でこの「営業利益」を評価しているので、金額が大きいほど良いのは言うまでもありません。

③ 経常利益

②で求めた営業利益に、営業外収益をプラスし、営業外費用をマイナスしたものが「経常利益」です。事業活動に付随して(本業とは違う部分で)経常的に生じる収益と費用を足し引きしたものです。営業外収益でよく見かける勘定科目としては受取利息や受取家賃や雑収入などがあり、営業外費用でよく見かける勘定科目としては支払利息や手形売却損や雑損失などがあります。なお、「経常利益」は経営状況分析(Y点)の指標の1つ『売上高経常利益率』の計算で使用します。

④ 税引前利益

③で求めた経常利益に、特別な要因で発生した一時的な収益(特別利益)と費用(特別損失)を足し引きしたものが「税引前利益」です。読んで字のごとく税金を引く前の利益で、税金(=法人税、住民税及び事業税)の計算の基になる利益です。特別利益としてよく見かける勘定科目としては固定資産売却益、特別損失としてよく見かける勘定科目としては固定資産売却・除却損、貸倒損失などがあります。なお、なんとこの「税引前利益」は、経営状況分析においても経営事項審査においても全く評価になってきません(笑)

⑤ 当期純利益

④で求めた税引前利益から税金(=法人税、住民税及び事業税)を差し引いたものが「当期純利益」です。「当期純利益がマイナスは絶対にNG!」と仰っている社長がよくいらっしゃいますが、実は「当期純利益」そのものは経営状況分析においても経営事項審査においてもこれまた評価になってきません。当期純利益は、配当などがなければそっくりそのまま前期からの繰越利益剰余金にプラスされ、次期への繰越利益剰余金となります。『利益剰余金』は経営状況分析(Y点)の指標の1つなので、ここで初めて影響が出てきます。

損益計算書の構造とそこに表示される5つの利益については、経営状況分析を受ける上でも自社の経営をしていく上でもきちんと理解しておきたいところです。文字と数字が羅列されている損益計算書を見ているとなかなか入り込めないかもしれませんが、上の図をざっくりとでも頭に入れておくと良いでしょう。さて、ここで1つ質問です。税理士が一番興味がある利益、一番注意しなければならない利益は、5つの利益のうちでどれでしょうか?

① 売上総利益
② 営業利益
③ 経常利益
④ 税引前利益
⑤ 当期純利益

社長にとってはこの5つの利益はどれも大事ですが、こと税理士にあっては、その中でも1つだけ際立って重要視している利益があります。それは、④「税引前利益」です。なぜなら税理士は「租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命」(税理士法第1条)としており、税金を正しく計算して正しく納税してもらうのが本来の仕事だからです。税金がいくら発生して最終的に今期の純利益がいくらになるのか、納税のためにキャッシュは足りるのか、資金繰りは大丈夫かといったことを考えるために、税金の計算の基となる「税引前利益」がいくらになるのかを税理士は常に気にしています。そのせいなのか、「税引前利益」と資金繰りに全力投球するあまり、それ以外の部分はアバウトになってしまうことがあるようです。それゆえに、決算書を建設業財務諸表へ“翻訳”することが我々行政書士の腕の見せ所でもあります。具体的にどのようにこの鉄則を活用していくのかについては、『 『売上高経常利益率』決算後でも経審の点数は上げられる! 』のところでご説明します。

 
行政書士法人Co-Labo
 

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