中小建設業者はきちんと減価償却をした方が良いです

こんにちは。“入札コンサルティングを通して建設業者さんの売上に貢献する”行政書士の小林裕門です。今回は経営事項審査(P点)の5つの評価項目のうち、X2(自己資本額及び平均利益額)について解説していきます。P点の全体像については『 経審結果通知書を見る上で、P点よりも大事なこと 』という記事でまとめているので、そちらもご覧いただければ幸いです。

倒産リスクが低いことを評価するX2

X2は、自己資本額と平均利益額(営業利益と減価償却実施額)について評価するものです。自己資本額は会社の体力を表し、平均利益額は会社がどれだけの価値を生み出せているかを表しており、X2全体としては会社の体力と収益力を評価している項目と言うことができます。これは建設業者の倒産傾向を調査した上で現行の経審が制度設計されたと言われており、言い換えれば、倒産しにくい会社であることを評価するものです。X2は自己資本額と平均利益額にそれぞれの点数表があるので、金額に応じて点数表に当てはめて点数化し、その上で次の式で計算します。点数表については、『経営事項審査の事務取扱いについて(通知)』に規定されているので、そちらをご参照ください。なお、自己資本額も平均利益額も0円に満たない(マイナスの)場合は0円として計算します。両方マイナスの場合には、最低点である454点(P点換算で68点)となる計算です。

自己資本は“返さなくてよいお金”

「自己資本額」は経営状況分析(Y点)においても『自己資本比率』として評価の対象となっていますが、x2では“比率”という相対的評価ではなく“額”という絶対評価となっています。繰り返しになりますが、「自己資本額」資本金と会社の設立から現在までの利益の積み重ねです。増資という方法もありますが、基本的には節税ばかりしていないできちんと利益を確保し続けることが、自己資本額の増加つまりは会社の体力アップにつながります。

自己資本について別の言い方をすると、“返さなくてよいお金”です。貸借対照表は、右側には資金の調達方法を、左側にはその調達してきた資金の運用方法がそれぞれ表示されています。右側の資金調達の方法のうち、「負債」はいわゆる他人資本と呼ばれ、これから返さなければならない資金です。一方で、「純資産(自己資本)」はまさに自分で出資した、あるいは自分で稼ぎ出した資金なので、“返さなくてよいお金”と言うことができます。自己資本がしっかりとある(=返さなくてよいお金がたくさんある)会社は、当然ながら倒産リスクが少なくなります。したがって、金融機関も自己資本がどれだけあるかというのを必ずチェックしています。

減価償却は詰め込めるだけ詰め込もう!

「平均利益額」は本業の事業活動での利益を表す「営業利益」と、財務諸表上は費用として計算されているけれども実際にはお金が出ていっていない「減価償却実施額」を合算することで、どれだけの価値を生み出せたかを表します。営業利益については『 公共工事の受注に繋がる決算書とは? 』で書いているように、決算書をそのまま転記するだけではなく“収益は上に、費用は下に”の原則で決算書をきちんと精査することで改善する可能性があります。また、当然ながら工事原価や販管費の見直しというのも中長期的に考えて取り組んでいきたいところです。

「平均利益額」のもう1つの要素が「減価償却実施額」です。これについて勘違いをされている方がたまにいますが、損益計算書の販売費及び一般管理費にある減価償却費だけではなく工事原価や兼業原価などに含まれているものも合算してかまいません。工事以外のものは含めてはいけないと思われている方がいて、知らずにもったいないことをしている可能性があります。そこで、そのモッタイナイを防ぐ策を伝授します。それは、“別表16はすべて経営状況分析に送ること”です。

平均利益額の計算で用いる前期と当期の営業利益及び減価償却実施額は、経営状況分析(Y点)の結果通知書に「(参考値)」として記載してもらうため、経営状況分析(Y点)の申請書類とともに減価償却実施額の確認資料を送付することになっています。行政庁で経審を受けるときにはこの「(参考値)」で営業利益及び減価償却実施額を確認することになります。なので、これはOKこれはNGと自分で勝手に判断するのではなく、別表16はすべて経営状況分析に送付して経営状況分析機関の判断を仰ぎましょう。最初から丸投げだと経営状況分析機関に申し訳ないですが、減価償却実施額の見落とし、取りこぼしがあって間違っていた場合には正しい数値を教えてもらえます。

減価償却実施額は法人税の確定申告書の「別表16」という書類で確認するのですが、この別表16が(1)から(11)まであり、どこの数字を使うのか、これは含めて良いのか悪いのかといったことがとても分かりづらいです。年に1度のことですし、担当者が変わればまた振り出しに戻ってしまうのでは困るので、“別表16はすべて経営状況分析に送ること”ということだけ社内のルールにしておくと良いでしょう。もちろん申請書に自分で計算した数字を記入することは必要ですが、もし間違っていたとしても経営状況分析機関が正しい数字を教えてくれるはずです。最後に、一応お伝えをしておくと、減価償却実施額に含められる別表16は、(1)(2)(4)(6)(7)(8)の6つです。ただし、この中でも項目によっては含められないものもありますので、ご了承ください。減価償却実施額に含めることができない借入金の保証料、前払保険料、前払家賃等が記載されている(6)は特に注意が必要です。

当期の利益がマイナス(赤字)であることを隠すために、わざと減価償却費を計上しない決算書をたまに見かけます。しかし、これは経営状況分析(Y点)では多少のプラスはあるものの、x2ではマイナスに働きますし、それ以外にもマイナスの影響が大きいので絶対にやめましょう。それ以外にもというのは、金融機関や調査会社の与信の問題です。金融機関は減価償却費の償却不足額があればそれを計算に入れた上で損益計算をし直してスコアリングしているので意味がありませんし、減価償却費が未計上でギリギリ黒字にしている(つまりは実質的には赤字の)場合は赤字を隠そうとしているために印象が悪くなるため逆効果です。決算書をなんとかして黒字にしたいという社長の気持ちはとてもよくわかります。しかし、社長のやることは金融機関や調査会社はすべてまるっとお見通しなのです。

決算後に小手先のテクニックで強引に黒字化するのではなく、まずは減価償却費を毎月の費用に組み込むことで、減価償却費を考慮した上で利益を出せるようにすることが大切です。税理士は面倒くさいので毎月の費用とせずに減価償却費を年度末にまとめて費用計上することが多いと思いますが、会社の数字が正しく見えるようにするために、会社を良くするために、公共工事を受注するために、税理士に協力を仰ぎましょう。どうしても協力してくれないのであれば、その税理士は貴社のことを真剣に考えてくれていないのですから、別の税理士を検討した方が良いかもしれません。

 
行政書士法人Co-Labo
 

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