『総資本売上総利益率』手元の資産をどれだけ効率的に回せているか

こんにちは。“入札コンサルティングを通して建設業者さんの売上に貢献する”行政書士の小林裕門です。経営状況分析(Y点)について解説、第3回目は『総資本売上総利益率』です。中小建設業者にとっては大きなポイントとなる4つの指標の1つです。


『経営状況分析(Y点)の徹底解説』~目次~

1、純支払利息比率
2、負債回転期間
3、総資本売上総利益率(←今回はこちら)
4、売上高経常利益率
5、自己資本対固定資産比率
6、自己資本比率
7、営業キャッシュフロー
8、利益剰余金


“値引き”は劇薬なので、ご利用は計画的に!

建設業財務諸表について総論を書いた記事『 公共工事の受注に繋がる決算書とは? 』でも書いたとおり、経営状況分析(Y点)においては、“貸借対照表はコンパクトであるほど良い”評価になります。復習になりますが、資産100,000千円の会社と資産10,000千円の会社が同じ売上の場合、経営状況分析(Y点)で良い評価となるのは後者の方です。これは経営状況分析では資産を効率的に回して売上を稼ぎ出している点が評価されることによります。そして、この『総資本売上総利益率』がその最たるものと言って良いでしょう。『総資本売上総利益率』は売上ではなく「売上総利益」を使って計算しますが、資産をどれだけ効率的に回転させて売上総利益を生み出しているかを見るための指標で、次の計算式で求めます。統計では、平成30年度の全体平均は40.24%となっていて、前年、前々年とほぼ横ばいに推移しています。

『総資本売上総利益率』は、数値が大きければ大きいほど良い指標です。そこで、まずは分子にある「売上総利益」を増やす方法を考えていきます。これは完成工事総利益のみではなく、兼業事業での売上総利益も含めた「売上総利益」で計算することになっています。「売上総利益」を増やす方法については『 経審の点数アップにつながる“売上高を増やす魔法” 』という記事にまとめてありますので、併せてご覧いただければ幸いです。

他にも、工事原価を下げるために材料の仕入先や外注先について定期的に見直しを行うのも手です。そんなのは当たり前だと思われるかもしれませんが、長年やっていると仕入先や外注先は固定化してきてナァナァになってしまう面は否めません。なので、仕入については市場価格を常にチェックし、新しい仕入先・外注先を作ることで、協力業者間で適度な競争・良い循環を生み出すことが大切です。また、これも当たり前すぎて社長に怒られてしまいそうですが、利益率の良い仕事に注力するのも1つの考えです。下請工事をしていると同じ工事をしていてもA社は10%しか利益が出ないがB社は20%利益が出るというようなことがあります。しかし売上高別に見てみると、A社が1番めでB社は5番めなので、A社の仕事は資金繰りを考えるとありがたいこともありなかなか断れないですよね。A社からの仕事を断る必要はありませんが、営業戦略としてはB社からの受注を増やせるように注力するのが吉です。

「売上総利益」を増やす上で社長に特に気をつけていただきたいのは、安易な値引きをしないということです。以前ご紹介した“お金のブロックパズル”を使って見てみましょう。今、請負金額100万円の工事があります。工事を完成させるのに材料費と外注費が20万円かかるので、粗利(売上総利益)は80万です。しかし、これが丸々儲けになるわけではありません。その工事を完成させるまでには、現場監督のお給料、その仕事を獲るための営業担当のお給料、総務や経理といった間接部門のお給料などの人件費がかかりますし、事務所家賃、水道光熱費や接待交際費などの営業経費もかかってきます。これらを考慮すると、請負金額100万円の工事を請け負っても手許に残るのは粗利(売上総利益)の80万円ではなく、最後に残った利益10万円です。

ここで、元請業者から「次の現場で埋め合わせするから、10%値引きして協力してくれないか」とお願いされたとします。建設業界ではよくある話です。さて、そうするとどうなるでしょうか。売上高は90万円になりますが、変動費は20万円のままなので、粗利が丸々10万円減って70万円になります。この時点で「粗利が70万円出るからまぁいいか」となってはいけません。そこからさらに固定費が出ていくので、最終的な利益は0円になってしまいます。

このように、一見その工事単体では粗利が出ているので問題ないように見えますが、粗利の後に出ていく固定費を考慮すると、安易な値引きによって利益が0円になったり利益がマイナスつまり赤字になることも十分にあり得ます。また、その失った利益10万円を他で取り戻そうとすると、100万円の工事を新たに1件受注してこなければならないので、営業担当からするとたまったもんではありません。安易な値引きが現場監督や営業担当をはじめとした会社内の不満因子にならないよう、なぜその値引きをするのかについてきちんと説明するのが社長や上司の大事な仕事です。

総資本(総資産)を減らすための具体策

続けて分母にある「総資本」ですが、これは貸借対照表全体の金額のことを言います。建設業財務諸表で言えば、「総資産」と読み替えていただくとしっくりくるかと思います。これを前期と今期の2期の平均を求めて計算します。一般には、総資本(総資産)が多い会社はそれだけ規模が大きい会社という評価になりますが、経営状況分析(Y点)においては手放しで喜べません。これはこの『総資本売上総利益率』が関係していて、総資産が多くなるほど点数が下がってしまうからです。

総資本(総資産)を減らして貸借対照表全体をコンパクトにするための具体策ですが、『 売上が増えても経審の点数が下がる『負債回転期間』 』でご紹介した負債を減らすための具体策は、この『総資本売上総利益率』でもほぼそのまま当てはまります。借入金を返済すれば現預金も減るので貸借対照表は小さくなりますし、過剰在庫に気をつけたり決算日を見直したりすることで貸借対照表をコンパクトにする効果を得ることができます。唯一、DES(デットエクイティスワップ)だけは負債を資本金に振り替えるだけ(貸借対照表の右側上下だけの移動)なので、ここでは効果がありません。ここではそれ以外に貸借対照表を無理なくコンパクトにするための具体策をご紹介します。

① 遊休資産を売却し、負債の支払いに充てる

突然ですが、社長はゴルフお好きですか?建設業者の社長はゴルフ好きな方が多いですよね。そんな社長に申し上げるのは大変心苦しいのですが、「ゴルフ会員権」ってしっかりと活用できていますか?確かに名門と呼ばれるゴルフ場もありますし、保有していること自体が1つのステータスではあると思います。しかし、「ゴルフ会員権」の金銭的なメリットを享受しようとすると、月2,3回以上コンスタントにコースに出たり、土日祝日にプレーしたりと、意外と大変です。あちこちのコースを回るのもゴルフの楽しみの1つでもありますし、社長ですからあえて土日祝日の高くて混んでいる日にプレーすることもありませんよね。であれば、その「ゴルフ会員権」が会社にとって本当に必要なのか、改めて検討するのも選択肢かもしれません。

「ゴルフ会員権」以外にも、別荘、保養所、リゾート会員権など、買ったはいいけど、「いつでも処分できるから」と言いながらなんとなくそのままになってしまっている遊休資産はありませんか?あるいは、購入時の金額からだいぶ値段が下がってしまっているので損が出るため売ることができずにいる株などはありませんか?多少損が出たとしても処分して負債の支払いに充てると、総資産を減らしつつ負債も減らすことができるので、タイミング次第では経営状況分析(Y点)においてはとても効果的です。

② 保険積立金の見直しをして、負債の支払いに充てる

中小建設業者の決算書を拝見していると、「保険積立金」がものすごい金額積みあがっているのを目にすることがあります。これは生命保険のお話になりますが、今の会社の状況、社長のライフスタイル、今後のビジョンなどを考えたときに、はたしてその生命保険は適切な保険かつ適切な金額になっていますか?保険の話はみなさん敬遠されがちで、保険会社や税理士任せということが多いです。保険は会社の状況や社長のライフスタイルなどにも影響があることなので、定期的に見直しをしてみてください。例えば、10年前に保険に入った当時は子どもが小さかったけど今や成人して社会人になろうとしているとか、以前は会社が借入をしていてその保証人になっていたがその借入もなくなり保証人も外れたような場合は、そこまで多額の保険をかけておく必要はなくなると思います。そういった社長の公私にわたる変化があるときは、保険を見直してみることをおススメします。もちろん見直しの結果そのままということでも良いと思います。案外、社長ご自身は今自分にどんな保険がかかっているのかを把握していないものです。それを整理するだけでも、見直しの効果はあるはずです。

『総資本売上総利益率』は、2期分の総資本(総資産)を平均することから一度総資本(総資産)が増えてしまうと、次年度の経審においても影響が出てきます。それに比例して「売上総利益」も増えているのであれば問題ありませんが、売上高ではなく「売上総利益」というところがポイントです。【急激な売上増→売掛金や買掛金で貸借対照表が膨張→その割に売上総利益の伸びはイマイチ】というような場合には一気に数値が悪くなるので、日ごろから工事原価を把握し予実管理をしたり、総資本(総資産)が急激に増えることがないように動向に気を配り早め早めに動いていくことが必要です。

 
行政書士法人Co-Labo
 

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