『自己資本対固定資産比率』中小建設業者は固定資産を持ちすぎない!

こんにちは。“入札コンサルティングを通して建設業者さんの売上に貢献する”行政書士の小林裕門です。経営状況分析(Y点)の8指標についての解説も5つめとなり、ついに折り返しです。5つめの『自己資本対固定資産比率』はY点への貢献度の振れ幅が2番目に小さいので、気楽に読んでいただければOKです。


『経営状況分析(Y点)の徹底解説』~目次~

1、純支払利息比率
2、負債回転期間
3、総資本売上総利益率
4、売上高経常利益率
5、自己資本対固定資産比率(←今回はこちら)
6、自己資本比率
7、営業キャッシュフロー
8、利益剰余金


自己資本を増やすにはコツコツが一番です

調達してきたお金を長期にわたって投資・運用していく固定資産は、返済が不要な自己資本で調達できているのが最も健全な状態です。そこで、自己資本と固定資産の数字を比べてみることで、会社の健全性を把握することとしています。一般的には「 固定資産÷自己資本 」で計算をする『固定比率』の方が有名なようですが、経営状況分析(Y点)では、分母と分子を入れ替えてその逆数を採用しており、これを『自己資本対固定資産比率』と呼んでいます。統計では、平成30年度の全体平均は230.37%で、前年、前々年と比べると上昇傾向にあるようです。

いつものとおり分母と分子に分けて見ていきます。まず分子にくるのは「自己資本」です。社長はこの言葉の方がイメージしやすいかもしれませんが、現行の建設業財務諸表には「自己資本」という表記はなく、「純資産合計」と表記されているので注意が必要です。経営をしていく上で自己資本は多ければ多いほど良いわけですが、経営事項審査及び経営状況分析(Y点)においても同じことが言えます。

「自己資本」を増やす方法は、基本的に2つしかありません。1つはきちんと利益を出し続けることです。「自己資本」は会社を設立してから現在に至るまでの利益の積み重ねなので、毎期利益を出し続けることでのみ唯一自然に増えていきます。しかし、社長と話をしていると、「今期は利益が出すぎてしまうから経費遣わなきゃ」とか「税金払うの嫌だから節税ししなきゃ」と仰る方が一定数いらっしゃいます。会社として節税と財務の安定のどちらを優先するのかによって変わってきますが、利益が出なければ自己資本は増えない!ということを改めて認識しておいてください。

「自己資本」を増やす方法の2つめは、新たな資金を注入して増資することです。現在の資本金が10,000千円であれば社長が新たに10,000千円を追加出資して20,000千円に増資する、社長が会社にお金を貸しているのであればそれを元手にDES(デットエクイティスワップ)を行う等が考えられます。(DESについては、『 売上が増えても経審の点数が下がる『負債回転期間』 』をご参照ください。)一方で、気をつけなければならないのは、例えば資本準備金を資本金に組み入れたり任意積立金を資本金に組み入れたりといった増資は、貸借対照表の「純資産の部」の中での科目間の移動でしかなく、自己資本は1円も変動しませんので意味がありません。この点はお間違えないように注意してください。

なお、増資をすると経営事項審査や経営状況分析(Y点)での点数アップという効果以外にも、対外的な信用力(特に対金融機関)がアップするというメリットもありますが、1つだけデメリットがあります。意外と忘れられがちなのですが、税金が増えるのです。法人県民税、法人市民税といったいわゆる法人住民税の均等割は資本金の額と従業員数で決まってきます。例えば東京都23区内で従業員数50人以下であれば、資本金10,000千円以下で70,000円、資本金10,000千円超~100,000千円以下で180,000円と、10,000千円を境に実に110,000円も変わってきます。増資をするときはこういったところにも気をつける必要があるので、税理士を交えて進めていくと良いでしょう。

固定資産を減らすことで評価されるという矛盾

次に、分母を見ていきます。分母にくるのは「固定資産」です。固定資産は大きく3つに分けられます。(1)土地・建物といった不動産や車・機械などの有形固定資産、(2)電話加入権やソフトウェアなどの無形固定資産、(3)保険積立金、ゴルフ会員権、敷金礼金などの投資その他の資産、の3つです。『 『総資本売上総利益率』手元の資産をどれだけ効率的に回せているか 』で総資本(総資産)を減らすための具体策である遊休資産の売却、保険積立金の見直しはここでもやはり効果があります。

それに加えて有形固定資産ならではの対策としては、例えばトラックやユンボといった建設系の車両をリース(賃貸)で済ませるのも1つの手です。建設系の車両や機械は専門的ゆえに結構なお値段してしまうので、購入すると有形固定資産が一気に増えることになります。しかしリース(賃貸)で済ませればリース料・賃借料の支払いのみなので、貸借対照表には出て来ないため、固定資産を減らすことに繋がります。

また、これは別の機会に独立した記事として書きたいと思いますが、この『自己資本対固定資産比率』や『総資本売上総利益率』のことが頭に入っていれば、不動産を購入したり大型機械を導入したりといった大きな買い物のときに、会社で買うのか、社長個人で買って会社に貸すのか、関連会社で買うのかというように選択肢が拡がります。

ここからは半分グチというかボヤキみたいになってしまうので、興味がなければ読み飛ばしていただいてかまいません。

これは経営事項審査及び経営状況分析(Y点)の制度的な問題なのですが、この『自己資本対固定資産比率』は、固定資産を持たない会社の方が評価が良くなってしまうちょっと変な指標です。固定資産が0で、自己資本がプラスであれば『自己資本対固定資産比率』は満点がついてしまいます。しかし現実はどうかというと、業種により違いはありますが、建設業者は建設車両や建設機械等を用いて工事を施工していくのが一般的です。固定資産(特に有形固定資産)は建設業者にとって大事な商売道具なのです。それなのに、経営事項審査の一部である経営状況分析(Y点)において固定資産を持たない方が評価されるという矛盾が生じてしまっています。この矛盾を解消すべく、経営事項審査の評価項目X2(自己資本額及び平均利益額)で減価償却費を勘案したり、その他の審査項目(w)で建設機械の保有状況を加点対象としたりしていますが、もう10年以上も見直しされていない経営状況分析(Y点)についてはそろそろ見直されても良いのではないかというのが、私個人の意見です。

 
行政書士法人Co-Labo
 

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