『営業CF』中小建設業者がここで点を取るのは難しい

こんにちは。“入札コンサルティングを通して建設業者さんの売上に貢献する”行政書士の小林裕門です。経営状況分析(Y点)の8指標のうち、今回は『営業キャッシュフロー(以下、営業CF)』について解説をします。売上10億円以下の中小建設業者においてはあまり重要度は高くありませんが、今後の自社の成長のために把握しておくとプラスになるはずです。


『経営状況分析(Y点)の徹底解説』~目次~

1、純支払利息比率
2、負債回転期間
3、総資本売上総利益率
4、売上高経常利益率
5、自己資本対固定資産比率
6、自己資本比率
7、営業キャッシュフロー(←今回はこちら)
8、利益剰余金


営業CF、「左は小さく、右は大きく」の原則

キャッシュフローという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、その中身について詳しく把握している方は意外と少ないです。上場企業にはキャッシュフロー計算書を作成する義務がありますが、中小企業においては作成義務がないため、まだまだピンと来ない方が多いのも致し方ないかなと思います。キャッシュフローには営業CF、投資CF、財務CFの3種類がありますが、経営状況分析(Y点)で評価対象としているのはズバリ本業でどれだけお金を稼げたかを表している営業CFです。ただし、経営状況分析(Y点)の指標としてここで用いるのは一般的に使われている営業CFとは少し異なるもので、次のように計算します。なお、統計では、平成30年度で0.169(億円)となっています。

また、分子の「営業CF」は次の8つの要素で成り立っています。

営業CF=経常利益(①)
+減価償却実施額(②)
-法人税住民税及び事業税(③)
+貸倒引当金(長期を含む)増減額(④)
-売掛債権(受取手形+完成工事未収入金)増減額(⑤)
+仕入債務(支払手形+工事未払金)増減額(⑥)
-棚卸資産(未成工事支出金+材料貯蔵品)増減額(⑦)
+未成工事受入金増減額(⑧)

①経常利益

良い決算書のところで話した損益計算書における「収益は上に、費用は下に」の原則はここでも活きてきます。また、5つの利益の図を思い出してみてください。売上と営業外収益を上げ、原価と販管費と営業外費用を下げることで経常利益はアップします。例えば、販管費であれば交際費は使いすぎていないか、ほとんど参加していないけど付き合いで所属している会費はないかというように、それぞれの項目をさらに細分化して検討すると良いでしょう。

②減価償却実施額

「赤字決算になってしまうと銀行がお金を貸してくれなくなる…」「見てくれが悪い」等の理由から、赤字を阻止するべく減価償却をしていない決算書を見かけます。税理士によると税法上違法ではないようですが、減価償却をしていない場合、銀行はお見通しなのであまり意味がないようです。それはさておき、減価償却費は損益計算書に費用として計上されていても実際にお金が出て行っているわけではないので、キャッシュフロー(お金の流れ)を考える上ではその分を利益として考えます。したがって、経営状況分析(Y点)においても減価償却費を計上しないのはあまり得策とは言えません。また、経営事項審査の評価項目であるX2(自己資本額及び平均利益額)でも減価償却費を営業利益に合算して評価対象としています。

③法人税住民税事業税

損益計算書や上の図を見るとわかりますが、経常利益のあと法人税住民税事業税が出ていくので、これをマイナスします。この点、「法人税住民税事業税」が計上されていない決算書をたまに見かけます。この辺の税金処理については改めて書きますが、建設業財務諸表においては当期の決算で生じる税金は当期の決算で費用処理するのがルールとなっています。決算書に法人税住民税事業税が計上していない場合は、確定申告書の別表4、5(1)、5(2)を見て正しく計上しましょう。

④貸倒引当金(長期を含む)増減額

この④以降は「増減額」と書いてあるとおり、前期については前々期と前期、当期については前期と当期の各科目を比較して、その増減額を求める必要があります。貸倒引当金は、売掛金や受取手形などの相手先が倒産をした場合の貸倒れリスクに備えるため、回収できなくなる(損失になる)かもしれない金額あらかじめ計算しておく引当金で、引当金に繰り入れる際に費用計上しておきます。しかし、キャッシュフローを考えると先に説明した減価償却費と同様に、実際にお金が出て行っているわけではないので、ここでプラスして戻してあげます。

⑤売掛債権(受取手形+完成工事未収入金)増減額

「売掛債権増減額」とありますが、ここで言う「売上債権」は建設業財務諸表上の「受取手形」と「完成工事未収入金」に限られます。したがって、兼業事業分の売掛金はこの計算に含めないので注意が必要です。例えば、決算書に「売掛金」とあるものを機械的に「完成工事未収入金」にしていると、その中に兼業事業分の売掛金が入っていて損をしてしまうことがあります。なお、「売掛債権ってことは売上が上がったのに、なぜマイナスをするの?プラスじゃないの?」とよく質問されます。これは受取手形や売掛金は現金ではないので、キャッシュフロー的にキャッシュが増えたことにならないためです。これがキャッシュフローの怖いところで、売上と利益が上がっていてもその回収が遅れている場合、それだけ現金が入ってきていないことになるためここが大きくマイナスになります。

⑥仕入債務(支払手形+工事未払金)増減額

⑤「売掛債権」は売上(収益)に関してのものでしたが、⑥「仕入債務」はその反対である費用についてです。考え方も真逆になります。ここで言う「仕入債務」は建設業財務諸表の「支払手形」と「工事未払金」に限られます。前述の⑤売掛債権のとき同様、兼業事業分の買掛金や工事以外の未払金はこの計算に含めないので注意が必要です。例えば、決算書に「未払金」とあるものを機械的に「未払金」にしていると、その中に工事分の買掛金(工事未払金)が入っていると損をしてしまっています。したがって、決算書に買掛金や未払金がある場合には、工事の材料代や外注費等が含まれていないか確認しましょう。また、これも⑤売掛債権と同様に「買掛金は負債なのになぜプラスをするの?」と不思議に思うかもしれませんが、仕入債務(未払金や買掛金)が増えているということはその分現金が出て行っていない(これから出てはいくのですが…)ということなので、仕入債務が増えればキャッシュフロー的にはプラスになります。

⑦棚卸資産(未成工事支出金+材料貯蔵品)増減額

棚卸資産という言葉は比較的に知られていますが、「棚卸資産」という名前のまま決算書に出てくることはあまりありません。棚卸資産は、まだ売れていない商品、工事の材料、仕掛中の工事の支出金など事業活動のために使用する・使用中である資産の総称だからです。棚卸資産に含まれる勘定科目は数多くありますが、ここでは「未成工事支出金」と「材料貯蔵品」に限られます。なので、決算書に「仕掛品」とだけある場合、それが工事用の材料なのか兼業用の材料なのか、未成工事支出金(仕掛工事)なのか兼業事業における前渡金なのか精査が必要です。これまた「仕掛品」を機械的に「未成工事支出金」へと読み替えて転記している場合、損をしていることになります。決算書には勘定科目の内訳書類も添付されているので、きちんとそちらで確認を取るようにしましょう。

⑧未成工事受入金増減額

ここまでお読みいただいた方は大体予想できるのではないかと思います。「未成工事受入金」は工事に関する「前受金」のことなので、これはキャッシュが入ってきていることを意味するのでキャッシュフロー的にはプラスに働きます。したがって、決算書に「前受金」とあるものを機械的に転記して兼業事業分の前受金としてしまうと損をしていることになります。

最後に、これらを1つ1つ覚えるのは大変(特に④以降)だと思うので、営業キャッシュフローにおける原則をお伝えしておきます。それが、「左は小さく、右は大きく」の原則です。

④~⑧に出てくる勘定科目を貸借対照表に書き込んでみると図のようになります。すると、資産と負債に4つずつきれいに左右に分かれているのがわかります。資産にある4つの科目は上記⑤と⑦なのでマイナスに働くことから金額が小さいほど良く、負債にある4つの科目は上記⑥と⑧なのでプラスに働くことから金額が大きいほど良いことがわかります。④貸倒引当金については決算書ではマイナス表示をして資産に計上することが一般的ですが、資産のマイナス(負債)という性格からわかりやすさ重視でここではあえて負債に記載しています。

冒頭でも書きましたが、中小建設業者にとってはこの『営業CF』の重要度はあまり高くありません。(その理由は『利益剰余金』にて書いています。)なので、計算に用いる8つの要素を暗記して覚える必要はありませんが、キャッシュフローの考え方と、「左は小さく、右は大きく」の原則だけは覚えておくと今後役に立つはずです。

 
行政書士法人Co-Labo
 

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